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水槽の彼女

創作

 濁った水槽。

浮かび沈み、また揺らぐおぼろげな私。

手繰り寄せて、紡ぎ繋ぎ止め。

声は遠く、瞳は近く、躰は遠く。

時計の螺子を巻いて。針を進めて。

 見つけて欲しかった。

在りし日の、あなたの魚。

 

 海の底、透明な壁の向こう。

聲も名も無くしたいつかの貴方。

遠く、遠く、沈みゆく。

暗い水面に手を差し込めば、こぼれ落ちた在りし日の風景。

運命をたどろう、こぼれた糸を寄せ集め。

壊れた針を浮かばせ、時さえ沈む水の底。

貴方を待つ朱い魚。貴方を眺める朱い魚。

 

 別れも告げず消えた貴方は何処に。

閉ざした住処は息苦しく。ただ帰る場所を探して。

辿り着けないあなたの水槽。

 

 瞳を重ねて、時を動かして。 

忘れていた貴方の色。隔てた硝子を壊した。

すり抜けた彼女は此処には居ない。

ただ二人寄り添えば。

あなたの水槽に居たのは私だった。

共に息をしよう。夜が明ける前に。

潮で満ちたこの部屋の片隅で。

 

 

水槽の彼女